ID:79647
石田尚志「紫から始まる絵」 Takashi Ishida “From Purple, a Tableau Begins”
Venue
タカ・イシイギャラリー 前橋
Taka Ishii Gallery Maebashi
Period
2025年5月11日(日)- 6月22日(日)
Exhibition Outline
石田尚志「紫から始まる絵」 イシダタカシ「ムラサキカラハジマルエ」
Takashi Ishida “From Purple, a Tableau Begins”
この度、タカ・イシイギャラリーは、石田尚志個展「紫から始まる絵」を開催いたします。同作家にとってタカ・イシイギャラリー前橋で初の個展となる本展は、アーツ前橋を会場とする、大規模な個展「絵と窓の間」(2025年4月19日―6月22日)と平行して開催され、最新作とともに同地を訪れたことで描き出された作品群が初公開されます。
この冬に描きはじめていていたのは、紫の四角形と、そこから始まる小さな渦や上昇する何かだった。紫の矩形から始まり、その紫の矩形に戻る。その間にさまざまな色が矩形の外に現れていく。自然に生まれたこの一つのルールを繰り返すなかで、色に染まった部屋を渡り歩くポーの小説「赤死病の仮面」を思い出していた。ポーの多くの作品はフレームと視線の混乱の風景だから自分をいつも驚愕させる。この短い小説にある城も虹を閉じ込めた暗箱のようであり、外への渇望と同時に、すでに外の光を全て内包してもいる。ふと、自分のこの紫の四角形は、その最初の部屋であり窓であり、そして、最後の部屋への扉にならなければならないと思った。ポーは「構成の論理」で、「大烏」を最後から書き始めたと語っているが、終わりへすすむことと、終わりから始まっていることが同時に起きているような作品とはどういうことだろう。ある画家は、真っ白なキャンバスの最初の状態と同じ領域のような絵を描きたいと言っていたが、その不可能性が絵画のもっとも大きな原理だろう。少なくとも、自分はその少し手前で、紫色の四角形を描いていたようだ。
石田尚志
萩原朔太郎の生地である前橋での作品制作と発表に向けて、石田は「絵」と「詩」の間にあるものについて熟考を重ねたといいます。ポーや、ポーを敬愛していた朔太郎に思いを巡らせながら描かれた本展の作品群は、色彩の変遷を追いながら、絵画における「始まり」と「終わり」に新たなアプローチを試みたものです。両者の作品において、色彩は象徴的かつ心理的効果を伴い、現実と幻想の境界が曖昧になるように用いられています。中でも青・紫・赤・黒といった色は、夢幻や孤独といったテーマと深く結びつきながら、詩的で幻想的な作品空間への道標となっています。
これまでも描画行為における時間の問題を探求してきた石田は、リュミエール兄弟の『壁の取り壊し』について言及しながら、ドローイング・アニメーションの技法に逆回転の手法を取り入れ、始まりと終わりが一致する作品を制作してきました。しかし、映像において可能な「時間の反転」が、絵画では成立し得ないことから、本展では、最初に描かれた場所へと最後に戻る循環構造に着目し、新たな試みが行われています。また、これまで青を基調とした作品が多かった石田にとって、紫というあらたな色を出発点とし、そこから様々な色の展開を試みることは、もうひとつの挑戦でもありました。ポーや朔太郎の詩にも見られる色彩の描写と呼応するかのように、紫の四角形は、色と時間の層をまといながら、観る者をイメージの深奥へと誘うことでしょう。
- Exhibition Website
- https://www.takaishiigallery.com/jp/archives/34659/
Events
オープニング・レセプション:2025年5月11日(日)13:30 —17:30
Access Information
タカ・イシイギャラリー 前橋 タカ・イシイギャラリー マエバシ
Taka Ishii Gallery Maebashi
- Address
-
〒371-0022
前橋市千代田町5-9-1 まえばしガレリア1F
Created Date:2025.5.27