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セクション4 響きあうイメージ

萩尾望都、山岸凉子、大和和紀は、それぞれに全く異なる作品世界を築いてきた作家です。しかし、その作品に目を凝らすと、不思議な響きあいを見ることができます。これまでご紹介した作品のなかにも、歴史、文化芸術への関心、西欧文化への憧憬、ジェンダー観など、三人に共通する大きなテーマが見えることでしょう。ここでは、より具体的なモチーフを手がかりに三作家の作品を横断的に紹介します。

1. 少女漫画とファッション

萩尾望都作品

ママレードちゃん

『週刊少女コミック』(小学館)1972年6月4日号(23号)

ママレード作りが得意なジョーは、ある日ファッションデザイナーを目指すジェフとぶつかり、材料のオレンジをぶちまけてしまう。それがきっかけで手作りママレードをジェフに届け、二人は急接近。しかしボーイッシュなジョーをジェフは男の子と勘違い。ジョーの恋心のゆくえは?初期のラブコメディ短編。

大和和紀作品

モンシェリCoCo

『週刊少女フレンド』(講談社)1971年4月20日号(17号)–12月7日号(50号)
おしゃれが好きでファッションセンスに溢れる少女ココ=シャルマンが、パリのファッション界を皮切りに、世界を股にかけるデザイナーとして力強く成長していく姿をドラマチックに描く。連載当時のモードの先端をふんだんに描いた華やかな画風、ステキな恋、夢溢れる展開で人気を集め、1972年にはTVアニメ化もされた。

2. 平安時代の物語

山岸凉子作品

落窪物語

『リリカ』(サンリオ) 1976年1号(創刊号)- 2号

原作の『落窪物語』は、10世紀末に成立したとされる作者不明の物語文学で、みすぼらしい家に住み、継母からもいじめられている落窪の女君が右近の少将に見初められるというシンデレラストーリー。

大和和紀作品

竹取物語

『GAKKEN MOOK 竹取物語』(学習研究社) 1988年
学習研究社が出版した『竹取物語』の解説ムックのために描き下ろされた挿画。田辺聖子氏の現代語訳に添えられた。「あさきゆめみし」と同時期に発表されたもので、平安装束の意匠が見事。

3. 母と娘の相克

萩尾望都作品

イグアナの娘

『プチフラワー』(小学館)1992年5月号

自身を醜いイグアナであるゆえに誰にも愛されないと思っている青島リカ。リカの母もまたリカだけがイグアナに見えていた。母は妹をかわいがり、リカを恥じていた。母に愛されずに育ったリカは、結婚して家族から離れて暮らすのだが。母と娘の愛憎と自己肯定への葛藤を描いた傑作短編漫画。

山岸凉子作品

鬼子母神

『月刊ビッグゴールド』(小学館) 1993年7月号

二卵性双生児の瑞季は兄とは性格も顔も似ず、男である兄は王子で、女である自分は悪魔だと信じる。父の顔はただの表札であり、菩薩のような母には、瑞季が失敗するたび後頭部に別の顔が見える。王子である兄は、母の期待に応えようと必死に頑張るが、ある日……。それぞれの役割を演じる家族の闇と崩壊を描いた物語。

4. 性の境界

萩尾望都作品

11人いる!

『別冊少女コミック』(小学館) 1975年9月号 - 11月号

宇宙大学の最終試験は、漂流している宇宙船で10人の受験生が力を合わせて53日間生き延びることだった。しかし、受験生が宇宙船に集まると、そこには一人多い11人が集っていた。11人目は何者か、その目的は?それぞれの事情を抱えた受験生たちが挑む、波乱の最終試験の幕が上がる。萩尾SFの白眉。

山岸凉子作品

キメィラ

『プチフラワー』(小学館) 1984年5月号
大学受験に失敗しS市郊外の新設の大学に進学した磯村は、女子寮で体育科のスプリンター・鈴木翔(すずきかける)と同室になる。美少年のような中性的な容姿を持ち、寡黙でクールな反面、動植物をこよなく愛すミステリアスな翔にときめく磯村だったが、市内で次々と殺人事件が起こり始め……。

大和和紀作品

薔薇子爵

『月刊mimi』(講談社)1976年4月号、11月号、1977年5月号、12月号
とある事情で故郷から出奔した貴族の娘フェーデは、偶然の導きにより、天使にも似た美しさを備えたギデオン子爵と出会う。薔薇に覆われた館で、老いた召使いと隠れるように暮らす彼と少しずつ心を通わせるフェーデだったが……?性を超越した謎多き青年・ギデオンを中心に描かれた耽美と幻想の連作短編。

5. 猫

萩尾望都作品

レオくん

『月刊flowers』(小学館)2008年2月号–2012年6月号

トラジマ猫のかわいいレオくんは、好奇心旺盛で楽しいことやおいしいものが大好き。近所のタツルくんと学校へ通ったり、お見合いをしたり、漫画のアシスタントをしたりするものの、失敗ばかりしてしまう。自由気ままな振る舞いや突飛な行動で周囲を驚かせながらも、人間社会で頑張るレオくんの奮闘をたのしく描くコメディ作品。

山岸凉子作品

猫・ねこ・ネコ

『Mei(冥)』(角川書店)Vol. 1(創刊号)

作者が愛猫を亡くし、喪失感を抱えながらも、被災地の保護猫を迎えたお話をつづったエッセイ漫画。生き物を家族として引き取る責任感や、動物たちが置かれている社会的な状況、支援者たちの真摯な努力などもさりげなく描かれている。さらにちょっと不思議な体験も。猫好きにはたまらない、心温まる一編。

コバンの日々

『言霊』BE LOVE KCDX(講談社) 2013年

作者の愛猫コバンの日常が綴られた短いエッセイ。

大和和紀作品

ピーター=ブラウンのふしぎな冒険

『週刊少女フレンド』(講談社)1973年4月24日号(17号)

もう少ししたら6歳になるピーターは、猫を飼いたいと思っていた。ある日、野良猫を追いかけているうちに白い猫の姿になってしまう。先輩猫のミーアから野良猫の流儀を教わるピーターだったが……。大和の動物への優しいまなざしが感じられる初期短編。

N.Y.小町

『週刊少女フレンド』(講談社)1985年8月5日号(16号)–1988年8月20日号(17号)
文明開化直後の東京、小間物問屋の跡取りとして男のように育てられた志乃だったが、弟が生まれたことにより突如「女性」に戻ることになり目標を見失ってしまう。そんな折、「お雇い外国人」としてアメリカから来日したアーヴィングと出会い、新天地ニューヨークを目指して旅立つ。時代の転換期に恋に仕事へと破天荒に突き進む小町娘の冒険ロマンスコメディ。