セクション1 プロローグ:少女漫画史の金字塔
少女漫画史に刻まれた珠玉の名作たちが、ここに集います。
萩尾望都のライフワーク「ポーの一族」(1972ー76年/新シリーズ:2016年ー連載中)。同時期に描かれた傑作「トーマの心臓」(1974年)、そして80年代を代表する「メッシュ」(1980ー84年)。
山岸凉子の初期を飾る本格バレエ漫画「アラベスク(第1部:1971ー73年/第2部:1974ー75年)、センセーションを巻き起こした歴史ロマン「日出処の天子」(1980ー84年)。
大和和紀の波瀾万丈のラブコメディ「はいからさんが通る」(1975ー77年)と、古典文学の『源氏物語』を完全漫画化した「あさきゆめみし」(1979ー93年)。
ページをめくるたびに胸をときめかせ、登場人物たちの想いに心を重ねてきた―そんな記憶を呼び覚ますとともに、原画でしか見ることのできない繊細で豊かな色彩をご体感ください。
萩尾望都作品
ポーの一族
『別冊少女コミック』(小学館) 1972年3月号–1976年6月号/新シリーズ:『月刊flowers』(小学館) 2016年7月号–連載中
バンパネラ(吸血鬼)として永遠の時を生きることになった少年・エドガーを中心に、様々な時代・視点で描かれたオムニバス連作。1970年代に短編・中編あわせて15エピソードが発表された。2016年には40年以上の時を経て新シリーズ「ポーの一族 春の夢」の連載が開始され、多くのファンを驚かせた。萩尾が生涯をかけて取り組んでいる、作家の物語世界を象徴する作品といえる。
トーマの心臓
『週刊少女コミック』(小学館) 1974年5月5日号(19号)–12月12日号(52号)
冬の終わりの朝、トーマ・ヴェルナーが陸橋から落ちて死んだ。トーマは、慕っていた上級生のユーリ宛てに手紙を遺していた。そんななか、トーマに生き写しの転校生エーリクが現れ、ユーリの心は揺さぶられる。寄宿制のギムナジウム(ドイツの中等教育機関)を舞台に繊細で多感な少年たちが織りなす「愛」についての物語。
メッシュ
『プチフラワー』(小学館) 1980年夏の号–1984年6月号
パリに住む画家のミロンの家に、ひょんなことから金髪に銀色が一筋入った中性的な美青年“メッシュ”が転がり込んでくる。自分を取り囲む複雑な家庭環境や陰謀に翻弄されるメッシュだったが、ミロンとの生活のなかで徐々に自己と向き合っていく。80年代を代表する萩尾のビルドゥングスロマンの傑作。
山岸凉子作品
アラベスク
第1部『りぼん』(集英社) 1971年10月号–1973年4月号
第2部『花とゆめ』(白泉社) 1974年6月号(創刊号)–1975年11月5日号(22号)
ソビエト連邦下、キエフのバレエ学校に通うノンナは、高身長に悩み自信を持てないでいたが、ユーリ・ミロノフとの運命的な出会いをきっかけに生来の才能を開花させていく。激しい競争と芸術への情熱の狭間で揺れ動きながらプリマドンナへの道を駆け上がっていくノンナの成長を描いた本格バレエ漫画。
日出処の天子
『LaLa』(白泉社) 1980年4月号–1984年6月号
飛鳥時代、中央集権国家づくりに貢献し、仏教文化を積極的に取り入れた叡智の人物として知られる厩戸王子(後の聖徳太子)の半生を描いた歴史ドラマ。美しい容姿と超人的な能力で他を圧倒していく厩戸の政治的手腕と、側近の蘇我毛人との愛憎入り交じる関係性の行方に当時の読者は熱狂した。
大和和紀作品
はいからさんが通る
『週刊少女フレンド』(講談社)1975年4月5日号(7号)–1977年4月5日号(7号)
花村紅緒はお転婆で男勝りな女学生。親が決めた許婚・伊集院忍少尉に反発しながらも次第に惹かれていく紅緒だったが……。大正という激動の時代を舞台に、恋にも仕事にも全力で立ち向かい、逞しく生きる主人公を描いた波瀾万丈なラブコメディ。大和作品に通底する自立した女性像とユーモアのバランスが絶妙な名作。
あさきゆめみし
『月刊mimi/mimi』(講談社) 1979年12月号–1986年7月25日号(No. 14)
『mimi Excellent』 1986年No. 1–1993年No. 27
平安時代に成立したとされる「いろは歌」の一節をタイトルに冠し、誰もが知る日本最古の長編物語文学である紫式部の『源氏物語』を漫画化。70年代に数々の恋愛ものを描いた大和が満を持して取り組んだ大人の恋物語であり、正確な時代考証による精緻な背景描写で『宇治十帖』を含め全巻を描ききった。高校などの教育現場で古典を学ぶ“参考書”としても読み継がれている。