森万里子《ONOGORO STONE III》
「ブルガリ カレイドス」展の第3章の扉を開くのは、森万里子の新作の立体作品《Onogoro Stone III》です。この作品は、日本最古の書物『古事記』に語られる、イザナギとイザナミの二神によるオノゴロ島の創造神話にインスピレーションを得ています。神話には、宝玉で飾られた天沼矛(あめのぬぼこ)の先から海に滴り落ちたしずくが積もり、オノゴロ島が出現したと語られています。この島は、最初の婚姻の儀式の舞台となり、生命の起源を象徴する場所となりました。
森は、この古代の物語を呼び起こすことによって、宇宙論や霊性と先端技術が交わる接点を探求し続けています。森の制作の特徴をよく物語る《Onogoro Stone III》は、現代的な素材と原型的な象徴性を融合させながら、瞑想的な空間を創り出し、個人的なものであれ普遍的なものであれ、起源について考えを巡らせるように見る者を誘います。この作品は、内なる精神の共鳴を宿すミニマルなフォルムを通して、過去と未来、神話と科学を繋ぐことに対する森の揺るぎない関心を体現しています。