アーティスト・ファイル2013―現代の作家たち
Artist File 2013:The NACT Annual Show of Contemporary Art

展覧会概要

国内外で注目すべき活動を展開する現代作家を取り上げ、個展形式で紹介する「アーティスト・ファイル」展。5回目となる今回は約2年ぶりの開催となり、海外の作家3名を含む8名の作家が参加します。出品作家は30代から60代まで世代も幅広く、表現メディアも多様ですが、いずれも芸術表現の無限の可能性に挑みつつ、社会を真摯に見つめ、自己と向き合いながら、ひたむきに制作に取り組んでいます。彼らの作品をとおして最新のアートに触れていただくとともに、本展が、我々が生きる複雑で豊かな世界を静かに見つめるきっかけとなれば幸いです。

会 期 2013年1月23日(水)~4月1日(月)
毎週火曜日休館
開館時間 10:00~18:00 金曜日は20:00まで
※3月23日(土)は「六本木アートナイト2013」開催にともない22:00まで開館
※入場は閉館の30分前まで
※会場内混雑の際には入場を制限することがあります
会 場 国立新美術館 企画展示室2E
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
主 催 国立新美術館
観覧料(税込)
当日券 1,000円(一般)、500円(大学生)
前売券 800円(一般)、300円(大学生)
団体券 800円(一般)、300円(大学生)
  • 高校生、18歳未満の方および障害者手帳をご持参の方(付添の方1名を含む)は無料。
  • 3月23日(土)は「六本木アートナイト2013」開催にともない入場無料。
  • 団体券は国立新美術館のみで販売。(団体料金の適用は20名以上)
  • 会期中に当館で開催中の他の企画展および公募展のチケット、またはサントリー美術館、森美術館(六本木アート・トライアングル)で開催中の展覧会チケット(半券可)を提示された方は、団体料金が適用されます。
  • 前売券は、10月3日(水)から1月22日(火)まで販売。(ただし国立新美術館では11月7日(水)から1月21日(月)まで販売)
  • 前売券および当日券は、チケットぴあ(Pコード765-342)、ローソンチケット(Lコード37648)でも取り扱っています。(手数料がかかる場合があります)
  • 国立美術館キャンパスメンバーズ加盟の大学等の学生・教職員は本展覧会を団体料金でご覧いただけます。
  • 会場での観覧券購入に次のクレジットカードと電子マネー等がご利用いただけます。 クレジットカード:UC、MasterCard、VISA、JCB、AMEX、Diners Club、DISCOVER、電子マネー:Suica(スイカ)、PASMO(パスモ)、ICOCA(イコカ)等、iD その他:J-Debit、銀聯
  • 開催情報は変更となる場合があります。最新情報はハローダイヤル、当館ホームページでご確認ください。
お問合せ ハローダイヤル 03-5777-8600

展覧会の見どころ

「アーティスト・ファイル」展とは

2008年に第1回展が開催され、今回が5回目となる「アーティスト・ファイル」展。新しい美術の動向を紹介する、という国立新美術館の重要な使命の一つを果たすため、継続的に開催する展覧会として企画されました。現代の美術状況を俯瞰すべく、毎回、当館の学芸スタッフが推薦する作家の中から数名を選び、個展形式で紹介します。

多様な表現とダイナミックな展示

「アーティスト・ファイル」展は、特定のテーマを設けていません。それにより、様々な領域から注目すべき作家が集まり、今を生きる彼らの多彩な表現をご覧いただくことが可能になりました。天井高8メートル、2,000平米の広大な展示スペースを独立した空間に分け、各作家が独自の世界を展開します。本展でも絵画から写真、映像、大規模なインスタレーションまで、8名の作家を一人一人丁寧に、かつダイナミックに紹介します。

海外作家と幅広い世代の作家たち

「アーティスト・ファイル」展の出品作家には、年齢や国籍の制限はありません。今回は5名の日本人作家のほか、イギリス、インド、韓国から3名の作家が参加します。30代から60代まで幅広い世代から選ばれた作家たち。今後の活躍が期待される若手作家の作品だけでなく、既に長いキャリアを持ちながら、これまで日本の美術館での大規模な展示の機会が少なかった作家の新たな展開も紹介します。

多数の新作を発表

出品作家8名のうち6名が、本展にて新作を発表します。東亭順と利部志穂、國安孝昌は、広い展示スペースを生かした大規模なインスタレーションを発表します。中澤英明は本展のために、30点余りの新作の絵画を制作しました。志賀理江子は11月に仙台で初めて発表する写真作品を、ナリニ・マラニは「ドクメンタ13」(2012)の出品作として話題になった映像作品を展示します。

丁寧な図録編集と作家情報のアーカイブ化

「アーティスト・ファイル」展は作品展示だけでなく、文字どおり、出品作家に関する情報をファイリングすることを重要な目的の一つとしています。展覧会カタログは作家ごとの8冊の図録で構成され、カラー図版とともに詳細な略歴と文献目録、および解説エッセイを収録します。また、展示の状況を掲載した記録集も会期半ばに出版します(別売)。このほか、作家に関する情報を将来にわたって収集し、今回までに40名の作家の情報がアーカイブ化されています。

出品作家

ダレン・アーモンド
Darren ALMOND (1971-)
ウィガン(英国)に生まれる。 現在、ロンドン在住。
今日のイギリスを代表する作家の一人であるダレン・アーモンドは、1990年代に同国の現代美術界に旋風を巻き起こしたYBA*の活動の頂点とも言うべき「センセーション」展(1997)に最年少で参加し、注目を集めました。 その後、ヴェネツィア・ビエンナーレ(2003)やテート・トリエンナーレ(2009)への参加をはじめ、国内外で精力的に活動を続けています。時間や記憶、旅をテーマとした作品は、写真から立体、映像まで多岐にわたり、いずれも抒情的で瞑想的な美しさを湛えています。本展では、2005年のターナー賞にノミネートされた映像作品《あなたがいれば・・・》と、世界各地で撮影した幻想的な写真シリーズ《Fullmoons》を展示します。
*1990年代にイギリスの美術界で頭角をあらわした一群の若手アーティストの総称「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト」の略
東亭順
AZUMATEI Jun (1973-)
東京に生まれる。 現在、バーゼル(スイス)在住。
東亭順は、「記録」と「記憶」が切り結ぶ関係の諸相を、造形表現に紡ぎだしてきました。写真の上にアクリル絵具とニスを塗り重ね、紙ヤスリで磨いて仕上げた独自の絵画には、写真で鮮明に記録されていたはずの空や雲が、美しくも、とらえどころない像として浮かび上がります。また2009年に渡欧してからは、木枠に張った古いシーツにニスを施す手法によって、新たな絵画表現を展開してきました。にじんだニスがおぼろげな模様をなすシーツを透かして、木枠から壁へと視線を導く絵画は、平面でありながら重層的であり、誰とは知れぬ、かつてのシーツの持ち主の記憶をたぐりよせる時間性をも内包します。本展では、新作の絵画を組み合わせたインスタレーションを出品します。
ヂョン・ヨンドゥ
Yeondoo JUNG (1969-)
晋州(韓国)に生まれる。 現在、ソウル在住。
ヴェネツィア・ビエンナーレ(2005)や台北ビエンナーレ(2006)をはじめ、国際的な舞台で活躍するヂョン・ヨンドゥは、韓国を代表する現代作家の一人です。CGを使用しない実写による独自の手法によって制作された写真や映像は、現実と虚構が交錯する不思議な世界をとらえ、新たなリアリティを生みだします。常に人々とのコミュニケーションをとおして作品を制作し、ごく普通の人々が抱く夢や、彼らのささやかな人生に温かな光を当てるヂョン・ヨンドゥ。本展では、子供が描いた絵をもとに制作された写真シリーズ《ワンダーランド》と、韓国の老人が語るエピソードを映像によって再解釈した《手作りの記憶》を出品します。
利部志穂
KAGABU Shiho (1981-)
神奈川県に生まれる。 現在、神奈川県在住。
利部志穂は、拾得した廃材、購入した材料、現場で見いだされたもの、ヴィデオ映像、ドローイング、ことばなど、使用可能で手に入る、ほとんどあらゆる素材を用いて、インスタレーションを制作します。展示される場もまた、美術館、画廊、家屋、空店舗、工場など、様々です。作者は、これらの素材を相互に、そして場と、接合し関係づけることによって、緊張感に満ちた仮設的な空間を作り上げます。ときにはそこに作者自身の身体が挿入され、パフォーマンスが行なわれることもあります。こうして、私たちが世界との間に取り結んでいると思われていた関係は、解体/再構築されるのですが、それはリアルな現在性を獲得しようとする試みなのです。
國安孝昌
KUNIYASU Takamasa (1957-)
北海道に生まれる。 現在、茨城県在住。
規則的にユニットを組み合わせる仕事で制作を始めた國安孝昌は、80年代半ばには、積み木のような形状の陶片と丸太を積み上げ、巨大な構築物を制作するようになりました。それは、彫刻のように自律した立体ではなく、また作品を組み合わせたインスタレーションでもありません。室内空間や建築物、あるいは自然の形象に寄り添い、増殖するように展開する造形物は、作家独特の方法論や手法によるものです。近年は屋外のサイト・スペシフィックな仕事を手がけることが多いだけに、久しぶりの屋内で、しかも国立新美術館の空間を使ってどのような可能性を追求するのか楽しみです。
ナリニ・マラニ
Nalini MALANI (1946-)
カラチ(インド、現パキスタン)に生まれる。 現在、ムンバイ(インド)在住。
イメージの断片を幾層にも重ね、夢想的かつ寓意的な絵画や映像作品を展開するナリニ・マラニは、インドを代表するアーティストの一人です。ともすれば、エキゾティシズムにみちた幻想的な物語としてとらえられうる彼女の作品には、暴力や抑圧など現代社会が抱える矛盾に対する作家の批判が潜んでおり、その多義にわたる解釈は観る者に委ねられています。画家として出発した後、1990年代以降には、映像やインスタレーション、さらにはパフォーマンスへと表現の幅を広げ、インド国内のみならず国際的な展覧会でも作品を精力的に発表しています。本展では絵画作品のほか、「ドクメンタ13」(2012)に出品された新作の映像インスタレーションを展示します。
中澤英明
NAKAZAWA Hideaki (1955-)
新潟県に生まれる。 現在、岐阜県在住。
東京藝術大学で油画技法材料研究室に学んだ中澤英明は、手間のかかるテンペラ技法を使って制作を続けています。近年は、規格サイズの画面を使い、モノトーンの背景に、正面を向いた子供の胸像を繰り返し描いています。写実的のようで、どこか現実離れした表情を帯びた子供たちは、一見愛らしくありながら、どこか冷めた、作品によっては、毒気さえも感じさせます。中澤のテンペラと油彩を併用した画面は、独特の絵肌を持っていますが、それは、作家の造形感覚を定着させるために不可欠なものだと思われます。
志賀理江子
SHIGA Lieko (1980-)
愛知県に生まれる。 現在、宮城県在住。
写真集『CANARY』(2007)で注目を集めた志賀理江子の写真には、魂の奥底まで響く圧倒的な力があります。死すべき運命の肉体と、生を渇望する精神。志賀にとって撮影は、矛盾と葛藤に満ちた生の根源にたどり着くための「儀式」そのものです。写真の舞台となる場所は徹底的にリサーチされ、言わば志賀の血肉と化すことにより、イメージが紡ぎだされます。志賀は、それを加工し、壊し、再びイメージへと蘇生させることにより、生きる意味を問うてきたように思えます。ロンドンで学び、世界各地で制作した志賀は、2009年より宮城県名取市の北釜に暮らしてきました。本展には、この地で制作された4年ぶりの新作が出品されます。

関連イベント

会期中、出品作家によるイベントを開催します。アーティスト・トークでは、作家自らが出品作について語ります。
※詳細は決まり次第お伝えします。

アーティスト・トーク

作家 ダレン・アーモンド
日時 1月24日(木)14:00~15:30
会場 3階 研修室A・B
定員 60名(先着順)
作家 ヂョン・ヨンドゥ
日時 1月25日(金)17:30~19:00
会場 3階 研修室A・B
定員 60名(先着順)
作家 ナリニ・マラニ
日時 1月27日(日)13:30~15:00
会場 3階 講堂
定員 250名(先着順)
作家 東亭順
日時 1月27日(日)15:30~17:00
会場 3階 講堂
定員 250名(先着順)
作家 國安孝昌
日時 2月16日(土)14:00~15:30
会場 3階 講堂
定員 250名(先着順)
作家 中澤英明
日時 3月2日(土)14:00~15:30
会場 3階 研修室A・B
定員 60名(先着順)
作家 利部志穂
日時 3月9日(土)14:00~15:30
会場 3階 研修室A・B
定員 60名(先着順)

※聴講は無料ですが、本展の観覧券(半券)が必要です。

ワークショップ

2月24日(日) 志賀理江子
URL: https://www.nact.jp/release/20130224.html

3月23日(土) 國安孝昌
URL: https://www.nact.jp/release/20130323.html

パフォーマンス

3月23日(土) 利部志穂

* 各イベントの日時や内容は変更となる場合があります。

取材に関するお問い合わせ

国立新美術館 広報担当 石松、窪田、桐生
〒106-8558 港区六本木7-22-2
Tel: 03-6812-9925 Fax: 03-3405-2532 E-mail: pr@nact.jp